研究所の概要
蛋白質研究所は創設者赤堀四郎初代所長により、化学、物理、生物、医学の分野の研究者を集めて「蛋白質の基礎研究」を行い生命の神秘を解明する目的で1958年に設立された。即ち、蛋白質の構造の理解のもとにその機能を追求することを目指している。本研究所は我が国の蛋白質研究の拠点として活動することを使命とする全国共同利用研究所であり、蛋白質科学の研究に関する世界の拠点として活動している。
研究内容・特色
- 蛋白質の構造研究
蛋白質の化学合成、質量分析を用いる蛋白質の一次構造、X線結晶解析法、核磁気共鳴 (NMR) 法、などを用いる蛋白質の立体構造、蛋白質の立体構造形成機構、蛋白質の修飾、蛋白質間相互作用などによる高次構造の解析、などを行う研究を展開する。
- 蛋白質の機能研究
哺乳類の体内時計、植物の光合成、動物組織の細胞外マトリックス、ゲノムDNAのメチル化制御、遺伝子組換え反応、ニューロンの分化と生存、などに高次の生物機能を蛋白質レベルで研究を展開している。
- 蛋白質の構造に基づく機能研究
ターゲットタンパクプロジェクトなどに参加し、蛋白質の構造解析を行い、構造に立脚した機能解析研究を行う。特に生物学的に重要な膜蛋白質や蛋白質複合体の構造解析を重点課題として研究を展開している。SPring-8の本研究所専用のビームラインを用いたX線結晶解析、電子顕微鏡構造解析や溶液NMR及び固体NMR構造解析はこれらの研究推進に威力を発揮している。
- 蛋白質の立体構造と機能に関するバイオインフォマティクス研究
世界3拠点の1つとしての国際蛋白質構造データバンク(wwPDB)の機能を果たすと共に、蛋白質の立体構造と機能に関するデータベースを作成しバイオインフォマティクス研究を展開している。
最近の成果
- 緑色光合成菌の巨大な光捕集オルガネラであるクロロゾームにあるバクテイリオ・クロロフィルc集合体の立体構造を固体NMR法で決定した。この集合体は、結晶を作らないためX線回折法などが適用できずに、長い間不明であった。この固体NMR法では、13Cで完全標識したクロロフィルcを対象にして、スピン拡散法で約90個の分子間距離を求めて構造を決めた。この集合体は二量体からなって、巨大な円柱状の構造を作っていた。(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2007, 図1)
図1 固体NMRにより決めたクロロフィルcから成る円柱アンテナの構造。
このアンテナは効率的な光捕集と反応中心へのエネルギー移動を実現する。
- 減数分裂期組換えは、ゲノムの多様性の産生に大切な役割を果たす。減数分裂期の組換え形成は厳密に制御されている。この制御に関わる新規複合体Spo16-Spo22を同定した。組換えの制御は2段階(assurance, interference)から成り、Interferenceには、Msh4-Msh5複合体が大切な役割を果たすことを示した。結果に基づき、減数分裂期組換え制御の新しいモデルを提唱した。(Nature Genetics, 2008, 図2)
図2 染色体上に存在するZMM複合体の構成要素Zip1(赤)、Spo16(緑)、DNA(青)の可視化
- QBRICK, Fras1およびFrem2は、CSPGリピートの繰り返し構造を特徴とする蛋白質である。我々はこれらの蛋白質が複合体を形成して基底膜に共局在することを発見した。これらのどれ一つでも欠けると、複合体形成不全により3者とも基底膜に局在できず、Fraser症候群様の表現形質を示す。これらの結果は、Fraser症候群の発症機序の解明に大きな手がかりを与えるものである。(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2006, 図3)
図3 QBRICKノックアウトマウスで見られるFRASER症候群様の表現形質