研究所の概要
基礎物理学研究所(基研)では、理論物理学の基礎的諸分野において日本をリードする先端的な研究活動を行なっている。また、毎年数多くの研究集会を主催し、集会参加者、所員との間で活発な研究交流・共同研究を行ない全国共同利用研究所としての活動を展開している。
本研究所は、1949年の湯川秀樹博士のノーベル物理学賞受賞を記念して1953年に初の全国共同利用研究所として発足し、その後1990年の広島大学理論物理学研究所との統合、2003年4月の改組を経て今日に至っている。現在、国際的においても有数の研究拠点となることを目指し研究活動の充実、発展をはかっている。
研究内容・特色
2003年の改組以降、基礎物理学研究所は以下の3つの部門から成っている。
- 物理学基礎研究部門(素粒子論、原子核理論):
この部門では自然界を構成する最も基本的な粒子やその間に働く4つの力の性質を研究している。現在、強い力、弱い力、電磁気力の3つはゲージ理論の枠組みで統一的に記述されることが確立されつつあり、特に超対称性を持つ統一ゲージ模型に関する活発な研究が行われている。重力の量子論は未完成であるが、素粒子を1次元的に広がった紐とみなす超弦理論が最も有力な候補となっており、超弦理論の力学の研究が重要なテーマとなっている。
- 物質構造研究部門(物性論、非平衡統計力学)
全ての巨視的物質は様々に相互作用している極めて多数の粒子の集合体である。この部門では、粒子系がマクロな集団をつくることにより初めて現れるさまざまな状態の性質を明らかにし、非平衡開放系での物質の運動形態や相構造の動的な変化などの解明を目指す。
- 極限構造研究部門(宇宙物理、一般相対論):
銀河や宇宙のスケールの世界に見られる現象を、一般相対論と素粒子論を両輪に、天文観測データ、計算機シミュレーション等を駆使して解明する。また、宇宙の創成、ブラックホールの物理など、現代宇宙論の中心的な謎の解明に挑む。
全国公募によって毎年20数件の基研研究会が組織され、研究会参加者は年間約2000名を超えている。こうした共同研究が研究成果を産み、新しい研究グループが生まれ育ってきた。また、本研究所は、国際会議の開催、外国人研究者の招聘、 来訪者の受け入れを積極的に行い、わが国の理論物理学の分野における国際交流・共同研究の中心的な役割を果たしている。
2007年度からは、5年間の事業として「クォーク・ハドロン科学の理論研究の新たな展開を目指す国際共同研究プロジェクト」が認められた。このプロジェクトでは世界各国から指導的な研究者達を招いて1〜3ヶ月にわたる滞在型研究集会を年2〜3度開催する。この活動を契機に、基研が理論物理学の国際滞在型拠点としてさらに成長、発展していくことを目指している。
最近の成果
Wmapなど近年の宇宙論的観測の発展には目覚しいものがある。これらは、一般相対論の妥当性を示しつつ、新しい物理の存在を示唆しているものもある。一方、素粒子の統一理論、特にストリング理論の発展に伴って、高次元時空に基づく理論など、一般相対論を超える様々な重力理論が盛んに研究されるようになっており、それらの実験的・観測的検証に大きな興味が集まっている。このような現状のもとで、2007年度の国際滞在型研究集会「Scientific program on Gravity and Cosmology」では、世界の第一線級の研究者による講演と活発な意見交換が行われた。その成果のひとつは、インフレーション宇宙における非ガウス的揺らぎの理論的・観測的研究の重要性が再認識され、その後の非ガウス的揺らぎの研究の世界的潮流を作る契機となったことである。
また、物性分野の滞在型国際研究集会「湯川国際セミナー2007:低次元系の多体相関効果とナノ構造の物理」においても、国際的に活躍する研究者多数の講演と、活発な討論が行われた。若手研究者はポスターセッションを通して世界の研究者と直接議論を交わすという貴重な経験を得た。