研究所の概要
金沢大学がん研究所は、文部科学省唯一のがん研究所として昭和42年に設立されました。以来、がんの基礎研究の重視と研究成果の積極的な臨床応用を当研究所の特徴として、がんに関わる広範な先端的学問分野での研究の発展と研究者の養成に努めてきています。平成18年には分子標的薬剤開発センターを拡充・改組し、がん幹細胞研究センター及び分子標的がん医療研究開発センターを設置しました。2センターと2基盤研究部門は相互に連携し、がんの診断・治療の開発研究のための新たながん分子標的の探索・研究を展開すると共に、その成果を臨床応用に発展させるがんトランスレーショナル・リサーチを推進する研究拠点を目指しています。
研究内容・特色
- がんの先端的治療戦略につながる基盤研究として、がん転移に関わるタンパク分解酵素、血管新生因子、がん幹細胞、アポトーシス、サイトカインの研究や、ポストゲノム戦略に基づくゲノム機能研究において特に顕著な貢献をし、これらの研究について国内外の研究グループと広範な共同研究を展開している。
- 分子標的がん医療研究開発センターを中心に、がんの診断・治療の新規標的分子の探索を共通の課題とし、その成果を臨床応用することを目指した探索的研究を展開している。さらにがん幹細胞研究センターの研究成果をがんの根治治療に発展させる。
最近の成果
生体の組織には、それを構成する細胞の源となるいわゆる“幹細胞”が存在している。それぞれの組織において幹細胞は、前駆細胞へ分化し細胞の供給に貢献すると同時に、自分自身を作り出すいわゆる自己複製という能力を持ち、幹細胞プールを維持している。この自己複製の制御機構に腫瘍抑制遺伝子であるATMが重要な役割を果たすことを明らかにした。ATM欠損マウスの造血幹細胞を詳細に検討した結果、前駆細胞には大きな障害が見られないのに対して、幹細胞の骨髄再構築能が極端に低下していること、さらに加齢に伴い幹細胞機能の低下による骨髄不全が進行することを見いだした。ATM欠損は、活性酸素の上昇の原因となり、それに反応して腫瘍抑制遺伝子p16INK4a, p19ARFが上昇し自己複製能を抑制していると考えられた。さらに正常の造血幹細胞の寿命を規定しているのが活性酸素-p38MAPK経路であることも明らかにした(Nat Med. 12:446-451, 2006)。以上のように、腫瘍抑制遺伝子が幹細胞特異的に機能していることが判明した。近年、がん組織の中にも、幹細胞的な役割を持つ“がん幹細胞”の存在が示唆され、がんの治療法開発に向けた新たな標的細胞として注目されている。組織幹細胞の研究を通じて、がん幹細胞の制御機構の解明に取り組んでいる。