研究所の概要
応用セラミックス研究所は、1996年に材料研究分野におけるCOEに認定され、70年の歴史を有する旧工業材料研究所を拡大して全国共同利用研に改組して作られました。高温超伝導や新しい電子、光、磁性などの機能を有する酸化物を始め、セラミックス材料分野で世界をリードする研究を展開しています。原子・電子レベルの研究から、材料のミクロな構造とマクロな物性との関係を解き明かし、複合材料などの構造用材料はもとより、建築構造物とファインなセラミックス研究を統一的に貫く方法論の構築を目指しています。
2006年4月には、このような研究者側の学術的価値観による評価に加えて、人と現象を繋ぐ材料の文化として、安全・安心な社会を求める社会的価値観からも評価される材料研究を志向するために、10年の時限で研究所付属セキュアマテリアル研究センターを設置しました。また、建築材料や免震構造などの大型構造物の研究を行う学内共通施設の建築物理研究センターを研究所教員が中心となって運営しています。
研究内容・特色
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セラミックス機能部門では、全く新しいセラミックスの機能を開拓することを目標に研究を行います。
強誘電性の起源を探る
高精度分光測定により強誘電性の本質に迫る。
強誘電体の原因となる格子振動モード
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セラミックス解析部門では、セラミックスの微視的構造と物性の相関、並びにそれらのダイナミクスを研究します。
物質を揺さぶって新材料を探す
圧力や温度の極短パルスを印加して物質の変化をその場観察し、新しい物性を探索する。
ヘムト秒レーザーを増幅してテラワットにする
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材料融合システム部門では、建築物の耐震、耐風及び耐火に関して、材料の基本的性質から、部材の力学的性質、構造物全体の性能までの総てに亘り、実験と解析の両面から複合的に研究を行います。
コンクリートのひび割れ挙動
数値計算によって建築構造物の力学的挙動を予測する際に必要となる構成材料レベルの力学モデルを開発する。
横方向プレストレスによるせん断ひび割れの抑制効果
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セキュアマテリアル研究センターでは、総合的な安全・安心な社会のための基盤技術を材料のレベルから探求し、リスク・環境負荷を考慮したシステムの構築を通して、新しい文化・価値観の創出を目指します。
安全で豊富な元素で機能を生み出す
セメント鉱物12CaO・7Al2O3をH-イオンで安定化したり、電子伝導体化できることを確認する。
実測による、水素化物イオンH-を包接する籠状格子の構造
最近の成果
鉄系統新高温超電導体の発見
電子物性の中で、最も劇的でかつ現象が明快なものは超電導であろう。1986年にベドノルツ&ミュラーによって銅系酸化物が30K付近で超電導らしい急激な抵抗減少を示すことが報告され、東大田中グループによって超電導転移であることと母構造が同定されると、世界中で凄まじい勢いて研究が開始された。いわゆる「高温超電導フィーバー」と呼ばれる社会現象を引き起こした。超電導転移温度(Tc)は急激に上昇し、YBa
2Cu
3Ox(ヒューストン大 チュウ博士)によって液体窒素の沸点を初めて突破した。その後、構造の工夫によって数年のうちに130K程度にまで上昇したが、その後記録は更新されていない。
高温超電導物質は、これまで2つに大別されている。一つは金属系である。磁性元素を含まない金属の基底状態は超電導であるといわれており、多くの金属が低温で超電導を示す。2001年に青山学院大の秋光グループによって報告されたMgB
2のTC=39Kはこの系統で最高峰となっている。もう一つ系統は上記の銅酸化物である。
筆者らの研究グループは、P型透明半導体の探索研究から派出して層状構造を有する遷移金属オキシニクタイドの電子・磁気特性を系統的に調べる研究を2005年から開始し、LaOFePがTc=4Kの超電導体であることを見出し、2006年6月に学会誌(JACS)に報告した。その後、2007年9月にはこれも強磁性金属元素を含むLaONiPが同様な超電導体であること、そして2008年2月23日にはLaOFeAsにフッ素をドープした物質が、Tc(onset)=32Kの高温超電導体であることを報告した。超電導と磁性とは相性が悪く、磁性元素の代表である鉄系で高温超電導体が実現するとは想定されていなかったようで、この論文がJACSのon-lineで発表されると、直ちに世界中で急激に研究が開始された。特に、中国のダッシュは凄まじく、Laサイトを順次、他の希土類金属で置換した試料を合成し、プレプリントサーバー(
http://arxiv.org/archive/cond-mat)上で貼ってある論文では、4月になってTcの値が50Kを超えることが公表された。
筆者らのグループは、日大高橋博樹研究室と共同で高圧の印加でTcが32Kから43Kに上昇することを見出し、2月27日の論文投稿し、4月23日にNature誌にon-lineで掲載された。この論文で指摘した、圧力によるTc上昇は、希土類置換による化学圧力の増大の効果のさきがけとなった。現時点で、鉄オキシニクタイド系のTcは金属系を超え、銅酸化物以外では最高の値を示している。上部臨界磁場の大きさも既に70T以上と報告されており、powder-in-rodという簡便な方法で線材化したという報告もcond-matに貼られた。物質科学に新しい領域が開けるのではないかという期待だけにとどまらず、材料としても役に立ちそうな側面も見えつつある。