研究所の概要
東京大学海洋研究所は、日本学術会議の勧告により我が国における総合的な海洋科学の研究・教育の場として、1962年に東京大学附置の全国共同利用研究所として設置されました。海洋の物理学・化学・生物学・地学・生物資源学といった既存の学問分野を超えて、複雑に相互作用する多様な要素からなる海洋を一つのシステムとして統合的に理解するための研究を行うと共に、大学院理学系研究科、農学生命科学研究科および新領域創成科学研究科と連携し、大学院教育を行っています。21世紀は、海洋のシステムをより深く理解することにより、多くの生命を育む地球という環境の中で人類がいかに生きていくかを学ぶ世紀です。地球表層の大きな部分を占め、私たち研究者の挑戦を待っている“フロンティア”である海洋を、海洋研究所は究明し、人類と地球の未来に貢献していきます。
研究内容・特色
東京大学海洋研究所は、海洋に関する学術研究を行う全国の研究者のための共同利用研究所としての役割を(1)学術研究船である白鳳丸と淡青丸による研究航海の立案と実施、(2)国際沿岸海洋研究センターにおける沿岸海洋学の推進の主に2つの共同利用研究の中核を担うことで果たしています。世界の海洋研究者と密接に連携して具体的には以下のような研究活動を行っています。
- 北太平洋の表層・深層循環および海洋大気における擾乱の発生・発達メカニズ
- 海洋に存在する無機有機溶存物質・懸濁物質の物質環境
- 海底地殻・地質構造および地球ダイナミクス
- 微生物・浮遊生物・底生生物の生態学・生理学的特徴
- 海洋生物の行動・環境適応と多様性の進化
- 水産資源の生態や数量変動、およびそれに関わる環境動態
最近の成果

謎の多いウナギの生態ですが、現在のところ大西洋ウナギはおおよそサルガッソー海で、太平洋のニホンウナギはマリアナ諸島西方海域で産卵すると推定されています。しかし、これはいずれも百万平方キロメートル以上もの広い海域を、産卵が行われる可能性のある範囲として示したに過ぎず、実際に卵や孵化したての仔魚を発見して、ウナギの産卵現場を押さえたわけではありません。東京大学海洋研究所は、これまでの知見を総合して、ニホンウナギは西マリアナ海嶺の3海山(アラカネ、スルガ、パスファインダー)のいずれかで産卵するという「海山仮説」と、各月の新月の日に同期して一斉に卵を産むという「新月仮説」を提出しました。これを基に実施した2005年夏の白鳳丸の研究航海では、ついに目も口もできていない孵化したばかりのニホンウナギのプレレプトセファルス(全長4.2-6.5mm)数百匹を6月7日の新月の日に採集することに成功しました。周辺の海流の速度と、プレレプトセファルスの日齢(孵化後日数)から推定した産卵地点は、まさにスルガ海山の近傍とわかりました。この発見は世界初のウナギ産卵地点の特定としてNature誌に発表されました。