研究所の概要
宇宙線研究所は1950年に乗鞍岳に建てられた宇宙線観測用の「朝日の小屋」に起源を持ちます。53年に東京大学宇宙線観測所となり、76年に宇宙線研究所となりました。現在、4つの観測施設・センターと3研究部門があります。研究所は全国共同利用研究所として、宇宙粒子線を研究手段として動的な宇宙を解明するとともに、加速器物理の伝統的手段とは異なる方法で、素粒子物理のフロンティアを開拓する研究を行っています。
研究内容・特色

研究所の研究の2本の柱は、地下と海外における観測です。宇宙粒子線の研究は観測に適した場所を見つけることから始まります。地下は、宇宙線等の放射線バックグラウンドが少なく、ニュートリノの観測など稀現象を観測するのに適しています。海外での観測適所は日本では得られない高山や、大気中での発光現象を捉えるに適した乾燥地帯です。
- 神岡地下に設置された5万トンの水チェレンコフ宇宙素粒子観測装置(スーパーカミオカンデ)を用いた、宇宙や素粒子、ニュートリノの研究。また、加速器で作られる人工ニュートリノを用いたニュートリノ振動の研究も行っています。素粒子物理学の大きな命題である陽子崩壊の研究も重要なテーマです。
- オーストラリアに設置されている大気チェレンコフ望遠鏡を用いた、1012電子ボルト領域の超高エネルギー天体ガンマー線の観測。超新星残骸、活動銀河核、パルサーなど活動的な天体の研究を行っています。
- チベットの高原地帯に設置された空気シャワー観測装置による高エネルギー宇宙線の観測。銀河宇宙線のエネルギースペクトル等の観測により、宇宙線起源の謎の研究を行っています。
- ユタの砂漠に設置された宇宙線望遠鏡により、最高エネルギー宇宙線の観測、限界エネルギーを超えた最高エネルギー宇宙線の存在の謎に挑戦します
- 約一億個の銀河の光学的観測による宇宙地図の作成。これにより、宇宙と銀河の現在の姿を正確に描き出すにいたる宇宙の進化を実証的に明らかにする研究を進めています。
- 一般相対論で予言される重力波の直接観測を目指すための技術開発をしています。
最近の成果
- 大気ニュートリノ研究によるニュートリノ振動の発見(1998年)。これは、ニュートリノに微小な質量があることを意味し、現在の素粒子理論に変更を迫ります。また、実際に、ニュートリノが飛行中に減少し再び増加に転ずるという、振動パターンも2004年に発見しました。
- 太陽ニュートリノ振動の発見(2001年)。カナダのSNO実験のデータとともに、太陽ニュートリノも振動している証拠を示しました。
- 超新星残骸や銀河中心などからの高エネルギーガンマー線を発見しています。
- 大規模な銀河観測によって、宇宙初期の密度ゆらぎに起因する銀河分布の疎密分布を発見しました。これは、宇宙進化を理解する新たな突破口となると期待されています。
- 銀河宇宙線の観測により、太陽や月の影を鮮明にとらえました。これは、太陽系磁場の研究などに重要なことです。